カテゴリ:1980( 10 )

戦場のメリークリスマス

d0105153_20141715.jpg 成島東一郎のカメラ、坂本龍一の音楽、出演者の(ぎこちない)演技が相まって摩訶不思議な世界を描き出している異色作。(個人的にはフェイバリットのひとつ)
 舞台となるジャワ島の日本軍捕虜収容所とそこでうごめく人の中には、生と死、西洋と東洋、過去と現在、組織と個人、友情と愛など相反する要素が渦巻いており、登場人物の心だけでなく観る者の心もジリジリとあぶる。
 そのせいかだんだん感覚が麻痺してきて、ヨノイやセリアズがどこへ行こうとしているのか、映画としてどう決着するのかが読めなくなってくる。
 脚本の構成はすごく図式的なのに、登場人物の心の揺れや収容所が持つ魔力が感じられるのは、やはり大島渚の演出力のせいだろうか。いや、それはこの映画のために集まったキャストとスタッフの間に起こったマジックのせいだろう。
 まぁ、そんなことをウダウダ考えて観るよりも、ただ映画に身を任せて観る方が‘どこか別の場所’に連れていってくれる。
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by ichio1970 | 2008-02-06 20:14 | 1980

Mr.Boo!アヒルの警備保障

d0105153_18161234.jpg ホイ三兄弟が集まったMr.Booシリーズの4作目(3人が出演したのは、この作品が最後)。
 最初に言っておきますが、Mr.Booシリーズのファンの間では、原語ではなく広川太一郎による吹き替えバージョンで観るのが基本。

 で、『Mr.Boo!アヒルの警備保障』は、作品の完成度・吹き替えとも最高点に達したシリーズ最高作。「ギャンブル大将」の頃の下品さと大衆受けするソフトなテイストをうまくブレンドして、ファンでなくても見やすい内容になっている。笑いも前時代的なドタバタから「オレたちひょうきん族」に通じるスピーディー&オバカテイストへと進化。
 広川太一郎・富山敬・安西正弘による吹き替えも絶妙のコンビネーションを披露。マイケル・ホイ以外の声優は作品によってコロコロ変わっているが(ツービートがやったことも)、やっぱりこの3人がベストメンバーでしょう。
 広川太一郎の駄洒落は、今までの作品ではセリフの合間に挟み込むスパイスだったが、本作ではマシンガンのように連発し、面白い面白くないの問題を超えて、独特のグルーヴを生み出している。
マイケル・ホイはこの調子で傑作を連発していくのかなと期待していたのだが、残念ながら精彩を欠く状態がつづいている。彼もすでに60代。今後は枯れた笑いをつくって、もう一度第一線に戻ってきてほしい。
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by ichio1970 | 2007-10-29 18:17 | 1980

ブレードランナー

d0105153_13373111.jpg  とにかくリドリー・スコット&ジミ・シードが生み出した未来の都市空間が素晴らしい。超高層ビルの下にうごめくアジアン・テイストなスラム街。住みたくはないが、一度は行ってみたい。
 それまでの未来像といえばハイテクで洗練された世界というのが大半だったが、この作品では科学は進歩していながら生活環境は後退しているというアンバランスな世界観が提示されている。(汚れた未来像を提示したのは『スター・ウォーズ』が先だが、ここまで徹底されていなかった)
 『ブレードランナー』で描かれた未来都市はその後SF映画のDNAレベルまで浸透してしまい、未だにこれを超える世界観は生み出されていない。『ブレードランナー』『マッドマックス2』『未来世紀ブラジル』が凄すぎたんで
 また、この作品にはハードボイルとクラシカルな恐怖映画の雰囲気が取り入れられていて、独特の空気間を漂わせている。リドリー・スコットは後のディレクターズ・カットでいかにもハードボイルチックなナレーションをカットしたが、個人的にはオリジナルバージョンが好き。(完全版でのユニコーンのシーンも説明っぽくていただけない)
 もうひとつ特筆すべき点は、敵であるレプリカントの死に様。女のレプリカントは主人公に後ろから撃たれてしまうし、大将のバディーがうなだれて死ぬシーンは悲しすぎる。
 文句なしの傑作にも関わらず、主演のハリソン・フォードはこの作品をひどく嫌っているのだとか。
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by ichio1970 | 2007-09-29 13:38 | 1980

エンゼル・ハート

d0105153_16364338.jpg ウィリアム・ヒューツバーグのオカルト小説『墜ちる天使』を映画化した、アラン・パーカーの異色作。

 浮気調査などを手掛ける冴えない私立探偵ハリー・エンゼルのもとに、ルイ・サイファーと名乗る謎の男から人捜しの依頼が舞い込んでくる。法外な報酬に目がくらみ、気乗りしない仕事を引き受けたエンゼルだったが、イヤな予感は的中、連続殺人事件に巻き込まれ、次第に謎の悪夢に苛まれるようになる…。

 この作品がつくられた80年代中頃は、アラン・パーカーもミッキー・ロークもデ・ニーロもノリまくっていた時期で、オリジナリティーのある世界観を作り上げている。現在のお三方を見ると、ファンとして悲しくなるばかり。
 アッと言わすようなショッキングシーンはないが、螺旋階段やエレベーター、換気扇、シャッターなどをの小道具を使ったイメージ映像が、観る者の恐怖心をジワジワあおる。
 また、舞台となる南部の町の描写も素晴らしく、雨と湿気が人を狂わしていく様がこっちにもジト〜と伝わってくる。
 幽霊やサイコキラーのようなビックリ系もいいが、この作品のような後に引く納豆タイプの恐怖映画ももっとつくってほしい。
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by ichio1970 | 2007-08-24 16:37 | 1980

未来世紀ブラジル

d0105153_16152049.jpg テリー・ギリアムの代表作というだけでなく、SF映画を代表する傑作。
 特にストーリーと美術はタメ息もので、テリー・ギリアムのあふれんばかりのイマジネーションを楽しめる。
 物語の前半はウィットに富んだセンスを散りばめながら軽快に進んでいくのだが、知らない間に悪夢的迷宮に迷い込んでいるという、怖い映画である。
 コーエン兄弟も『未来は今』で本作の前半部分のテイストとレトロなゴシック美術を借用(?)したが、あらゆる面でこちらの方が上。
 
 また、ジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ、イアン・ホルムといった役者陣も、嫌味な演技になる一歩手前の怪演で、それぞれいい味を出してる。さすが!
 
 この作品以降テリー・ギリアムのテンションは落ちる一方で、『ブラザーズ・グリム』を観たときは‘終わった’と思ったが、『ローズ・イン・タイドランド』で復調。あと1本でいいから『未来世紀ブラジル』クラスの作品をつくってほしい。
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by ichio1970 | 2007-08-17 16:16 | 1980

建築家の腹

d0105153_18354389.jpg いまいちブレイクできず尻すぼみ状態にあるピーター・グリーナウェイの作品の中でも地味で目立たない作品。
 グリーナウェイ特有のケレン味ある演出を抑え、分かりやすいドラマとして撮ったことがその原因。しかし、グリーナウェイ作品であることを意識せず観るとすんなり楽しめる。

 建築家のクラックライトは敬愛する建築家ブーレの展覧会監修のために、妻と共にローマを訪れる。ところが彼は到着して間もなく激しい腹痛におそわれるようになる。その頃妻はローマで知り合った若い男と浮気を重ね、妊娠する。謎の腹痛と嫉妬で精神的混乱に陥ったクラックライトは次第に死に取り憑かれていく…。

 「死と誕生」という二元的なテーマを際だたせるため、左右対称の風景を多用したり、クラックライトの出っ張った腹と妻のスリムな腹を対比させたり、彼らしいクドい演出があるが、それはご愛敬レベル。それよりもラストに行き着くまでのユルい時間を楽しむのが正解。
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by ichio1970 | 2007-06-19 18:36 | 1980

スカーフェイス

d0105153_15541993.jpg デ・パルマ&ストーン&パチーノ トリオがつくり上げたギャング映画の傑作。
 『ゴッドファーザー』がギャングの世界を格調高く描いたA級品なのに比べ、こっちは徹頭徹尾ドロくさいB級路線。
 主人公も、『ゴッドファーザー』の見習い時代からクールだったマイケルに対して、トニー・モンタナはいつまでもチンピラテイストが抜けないカッペ野郎。とても同じ役者が感じているとは思えない。

 キューバから成功を夢見てアメリカにやって来たトニー・モンタナは、持ち前のガッツと行動力でメキメキ頭角を現す。調子づいた彼はボスを差し置き、コカインの元締めと直接取引をはじめる。しかし、自らもコカイン漬けとなり、次第に破滅の道へと進んでいく。

 (裏)サクセスストーリーをマッハスピードで見せる展開は普通ならスカスカに感じるはずなのに、そうなっていないのは登場人物それぞれのキャラが立っているから。だから、バイオレンスシーンもただのコケおどしにならずに凄みがある。
 ただ、ジョルジオ・モロダーの音楽とミシェル・ファイファーのダンスはショボくて、こっちまで気恥ずかしくなってしまう。
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by ichio1970 | 2007-05-01 15:54 | 1980

マッドマックス2

d0105153_157475.jpg 80年代、『ブレードランナー』と並んで近未来のイメージを植えつけた作品。
 『ブレードランナー』はアジアンゴシックと呼びたくなるスラム街、そして『マッドマックス2』はパンクファッションに身を包んだ悪党が徘徊する荒野が舞台。
 この時期の近未来を描いたSF映画は、ほとんどがどちらかの亜流になっていたくらい圧倒的な世界が表現されている。どちらも光り輝く明るい未来ではなく、汚く、秩序の崩壊したカオスが描かれたのは偶然ではなく、当時の社会情勢や人びとの不安感が滲み出てきたもの。
 こんな時代にとことん浮かれてバブルに突入していった日本は、外国から見れば完全にイカれた国だったに違いない。
 
 本作はビジュアル面では他を寄せつけない圧倒的なクオリティを誇っているが、ストーリー・人物描写はかなりいい加減。しかしマッドマックス シリーズは、マックスがV8インターセプターを乗り回し、ショットガンをブッ放してくれればそれでOK。
 と思ったら、インターセプターは早々に破壊され、ショットガンもほとんど不発。実はこの作品、かなり身もだえする寸止め映画である。
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by ichio1970 | 2007-02-21 15:08 | 1980

バートン・フィンク

d0105153_1305218.jpg 薄暗く長い廊下、ベロンとめくれる壁紙、映画のラッシュフイルム、燃え上がる安ホテル、すべてが地獄の入口に見えるコーエン兄弟の異色作。

 ニューヨークで注目されている新鋭の舞台作家バートン・フィンクは、ハリウッドからC級レスリング映画の脚本を依頼される。映画会社のオフィス、社長、ロスの蒸し暑さ、すべてに居心地の悪さを感じながらも、エージェントのすすめで仕方なく契約することに。依頼された映画は中身のないZ級の作品なのだが、これがどうしてなかなか書けない。悩めば悩むほどイメージが遠のいていく。そしてだんだんとタイプライターに挟み込まれた白紙や、ホテルの部屋の壁がフィンクを追いつめる。切羽詰まった彼は空想の世界へと逃げ込むようになり、現実と幻想の境目がなくなっていく…。

 この作品を観ていると、どこからどこまでが本当なのか分からなくなる。しかしこれは私たちの住む世界も同じこと。現実だと思っていることもファジーな機能を持つ脳を通しており、すべての出来事は脚色されたフィクションだといえる。
 そういう意味で『バートン・フィンク』は、一見幻想的でありながらリアルに人の頭の中を描いた作品。
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by ichio1970 | 2007-02-16 13:01 | 1980

ブルーベルベット

d0105153_1382351.jpg デヴィッド・リンチの変態ワールドが公のものとなった記念碑的作品。
 見所はカイル・マクラクランの白いオイドではなく、オープニング。
 青いカーテンの向こうには、懐かしいオールディーズをバックに揺れるチューリップや、にこやかに手を振る消防士など心和む景色が。でも、どこか変。何だろうと覗いてみると、そこにはグチョグチョ、レロレロな世界が大きな口を開けている。
 サバービアライフに潜む「魔」は、リンチのテーマ。ネオンの光によってあらわになる、日常と隣り合わせの闇の何と恐ろしくて美しいこと。
 
 そしてこの作品でもうひとつ重要なのは、デニス・ホッパー演じるフランクがハリウッドの映画人に、‘こんな訳の分からんヤバい輩を登場させてもいいんだ’と教えてしまったこと。
 「俺を見るな!」と殴りながらF◎◎Kする姿は確かにインパクトはあったが、個人的にはディーン・ストックウェルが演じる売春宿のママが「イン・ドリームス」を歌う姿の方がディープインパクト。彼がどんな人間で、どんな生活をしているのか、こっちの方もこっそり覗いてみたい。
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by ichio1970 | 2007-02-14 13:09 | 1980