カテゴリ:1990( 11 )

ポンヌフの恋人

d0105153_1446111.jpg 大学生の頃初めてこの映画を観たときはピンと来るものがなく、自分とは無縁の映画だと思いつづけて15年。
 それが2、3年前に『マッドマックス2』や『ブレードランナー』『アキラ』などに連なる汚れた都市像を描いたデストピアムービーとして大復活!
 あの朽ち果てたポンヌフ橋には間違いなくデストピアの魅力が刻み込まれている。映画の設定では橋以外の場所(パリ)は普通の街なみなんでしょうが、どことなく世界中が崩壊したように思えてくる。
 それにアレックスの顔と動きが『マッドマックス2』に出てくるウェズ以上にこわれていて、より世紀末感が強くなっている。
 なかなかへヴィな都市造形です。

 もともと恋愛モノに興味がないせいか、物語自体はまったく理解できない。突然橋の上で踊り出すわ、人を焼き殺すわ、橋から突き落とすわ、この人たち何をやってるんでしょうか。
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by ichio1970 | 2008-06-04 14:48 | 1990

デッドマン

d0105153_16332787.jpg ジム・ジャームッシュ&ジョニー・デップという異色コンビによる、ロード&トリップムービー。

 仕事を求めて西部の田舎町に辿り着いた会計士 ブレイクが行きがかりで人を殺してしまい、殺し屋から追われる羽目に。途中、摩訶不思議なネイティブ・アメリカンの男に助けられ行動を共にするようになるが、追っ手は徐々に迫り…と、ストーリーはいたって単純。

 しかし内容が普通じゃない。とにかく最初から最後まで‘死’であふれかえっている。冒頭のブレイクが乗る汽車から不吉な空気が充満しており、町に着いていきなり目に飛び込んでくるのは棺桶の山。そして、ジョン・ハート扮する工場長が登場すると一気にストレンジ・ワールドへ突入。そしてその後は人が死んで死んで死にまくる。みんな、いとも簡単に殺したり殺されたりするため、だんだん目の前で繰り広げられていることが理解できなくなってくる。さらに全編に流れるニール・ヤングのギターが深いトリップへ引き込む。
 そんな中、ハッと我に返るのが、傷を負ったブレイクが死んだ子鹿を抱くシーン。死を悟ることではじてめ生を感じるという、何とも悲しく そして美しい映像美。

あと、この作品の序盤には蒸気機関車や工場なんかが出てきて、スチームパンク的なテイストがあったりしておもしろい。
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by ichio1970 | 2007-12-28 16:34 | 1990

羊たちの沈黙

d0105153_15291222.jpg 90年代以降のサイコサスペンス・ブームの先駆けで、最高作の誉れ高い作品。
 また、「ハンニバル・レクター」という悪のヒーローを生み出した作品でもある。
 確かにクオリティは高いし、面白い内容だけれど、巷でいわれているほど完璧な映画とは思わない。
 いちばんのネックは、ストーリー本筋のゴールとなる殺人鬼 バッファロー・ビルのキャラが薄いこと。人を殺したうえに皮をはぎ、チ○コを後ろにまわして踊っているわりには恐ろしさが伝わってこない。このキャラに魅力がないと、いくらクラリスやレクターのキャラが立っていても、物語を引っぱるチカラが弱くなってしまう。
 それと、レクター先生はズバ抜けた頭脳の持ち主ということになっているが、これもピンとこない。単に情報を出し惜しみしているオッサンに見えちゃう。

 それでも、この作品が素晴らしいことには異議なしであります。
 まず、ジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスの演技がよい。下手したらジェイソンみたいなモンスターになるレクターをイカれた人間として見ることができたのは、アンソニー・ホプキンスの演技力のおかげ。(瞳孔が開いたあの顔は怖すぎ!)
 そして、ジョディ・フォスターの演技がとんでもなく素晴らしい! 特に初めてレクターに会い、彼に過去を分析されるシーンはこの映画のクライマックスといえる。あれはレクターによる精神的レイプでしょ。

 『羊たちの沈黙』は、女性捜査官が主役という それまであまりなかった設定のせいか、ことある毎に女性に対する男の偏見や下心がクローズアップされている。クラリスは何回、視線や言葉で犯されたことか。
ジョディ・フォスターが『告発の行方』に出演した後で、この作品を選んだわけも何となく分かる。
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by ichio1970 | 2007-11-24 15:32 | 1990

アイズ・ワイド・シャット

d0105153_1759221.jpg  トム・クルーズ×ニコール・キッドマン夫妻(当時)が夫婦役で出演し、オールヌードでF○CKシーンまで披露した話題作。そして、スタンリー・キューブリックの遺作。
 巷の評価はイマイチなようだが、かなりの力作。いや傑作といっていい。

 金持ち相手にうまくやっている内科医ビルはある晩、妻から‘見知らぬ水兵さんに本気でF○CKされたいと思った’と告白され動揺する。
 F○CK!とばかりに夜の街を彷徨っているうちに、あれよあれよと大富豪が集う謎の仮面乱交パーティーに侵入することに…。

 この映画が凄いのは、人物描写でも、役者の演技でも、乱交パーティーの描写でもない。これらははっきりいってイマイチ。(でも、乱交パーティーのオープニング儀式は妙に印象に残ります)
 弛緩した時間感覚、これがこの作品を特別なものにしているすべて。設定ではほんの僅かな時間を描いただけなのに、ものすごく長い出来事を見せられているような気がし、さらに途中から映画を観はじめてどれくらい時間が経ったりか分からなくり、こっちまで謎の空間に迷い込んでしまった感覚に襲われる。

 で、最後はニコール・キッドマンの「F○CKしましょ♪」というセリフであっけなく終わる。
 これがキューブリックの意図によるものなのか、それともただ単にお歳でユルくなっていただけなのかは謎のまま。F○CK!
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by ichio1970 | 2007-08-10 17:59 | 1990

エイリアン4

d0105153_1716090.jpg 大方のエイリアンファンの間で「3」と「4」はこっぴどくコキ下ろされているが、今改めて観直すと意外におもしろい。(とはいえ、エイリアンの恐ろしさを感じさせる得体の知れない不気味さと、生理的嫌悪感が発散されているのは1作目だけ)
 ジャン・ピエール・ジュネによるこの4作目は、2作目から失われていた生理的嫌悪感を取り戻そうとしている点でも好感が持てる。オープニングのヌメヌメ映像を観れば、ジュネがこの点を意識してつくっていたことが分かる。
 基本的なストーリーは過去3作とほぼ同じだが、内容はジュネが「エイリアン」というネタを使ったパスティッシュといった趣。だから怖くないばかりか、笑いを誘うシーンがところどころに盛り込まれている。リブリーがクローンで、エイリアンの母親になってしまう設定などは、ゲラゲラ笑いながらつくったのではないかと思うくらい。
 しかし作品自体はしっかりつくられており、SFアクションとして十分楽しめる。また、ダリウス・コンジのカメラが素晴らしく、お決まりのシーンにも深みを与えている。(プラス ウィノナ・ライダーがとことんきれい!)
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by ichio1970 | 2007-05-25 17:16 | 1990

御法度

d0105153_214248.jpg 大島渚の目下最新作。世間的には評価が低いようだが、なかなかどうして面白い。全編に漂う閉鎖感と登場人物間の緊迫感がグイグイと物語の世界へ引き込む。
 到底妖しい美男子には見えない(怪しい少年には見える)松田龍平を筆頭に、ほとんどの役者は滑舌が悪く棒読みで何を言っているのか聞き取れなくて最初はイライラするが、不思議と途中から愛すべきキャラクターに変身する。
 浅野忠信は他の作品では見たことのない男の色気を発散しているし、武田真治の沖田総司も新鮮。最後のたどたどしい長台詞のシーンなど、かわいく思えてくる。
 また、冷え切った京都の夜に青白い情念の炎が漂っているような雰囲気は、近年量産されているJホラーよりも怪談的なオーラを生み出していて怖い。意図せずにこんな映画を撮る大島監督はやはり凄い。(この作品は新撰組を描いたもので、所謂ホラー映画ではありません。念のため)
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by ichio1970 | 2007-05-15 21:42 | 1990

セブン

d0105153_2242461.jpg 『羊たちの沈黙』と共にサイコ・スリラーというジャンルをつくってしまった問題作。
 カイル・クーパーが手掛ける病的なオープニングを見るだけで、この映画がタダものではないことが伝わってくる。そして、そのインパクトはラストまで少しも衰えない。いやはや、見終わってこんなにグッタリする映画はそうはない。

 舞台はアメリカのとある地方都市。殺人課の新米刑事ミルズは就任してすぐに猟奇殺人事件を担当することになる。相棒は定年間近のベテラン刑事サマセット。彼らをあざ笑うかのように同一犯人による殺人は繰り返され、それがキリストの7つの大罪(大食・貪欲・怠惰・高慢・色欲・羨望・怒り)に基づいて行われていることが明らかになる。しかし犯人ジョン・ドゥは殺人計画を完成させる前になぜか自首してくる。果たして彼の思惑とは?!

 下手をすればC級映画になりそうな話を独特の雰囲気と緊迫感あふれる作品に仕上げたのは、間違いなくデヴィッド・フィンチャーの演出とダリウス・コンジのカメラ。
 脚本のオカルティックな要素とフィンチャーのテーマである‘信仰の闇’がうまく合わさったといえるだろう。
 また、コンジの描く、薄暗く、いつも雨が降っている都市像は『ブレードランナー』 meets 『エンゼル・ハート』といった趣。
『セブン』が公開されてもう10年以上経つが、この作品を超えるサイコ・スリラーは思い当たらない。
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by ichio1970 | 2007-03-29 22:42 | 1990

髪結いの亭主

d0105153_1727459.jpg パトリス・ルコントが描く、オトコの理想郷。
 
 理容師のオッパイで性に目覚めた少年アントワーヌはそのまま中年男になり、髪結いの亭主になるという夢を叶える。しかも彼は一切働かず、店で美人の妻マチルドを見つめるだけ。しかもしかも客の目を盗んでS○Xまでしてしまう。マチルドもそんなグータラ亭主をとことん愛し、幸せな日々を過ごす。しかし、愛するあまり二人の生活は意外な結末をむかえることに。

 「かほり立つ、官能」、このキャッチコピーが『髪結いの亭主』の魅力をすべてを言い表している。ちょっとした視線、店内に響くハサミの音、髪を洗う仕草、そしてアントワーヌの変テコな踊りすべてから、蒸せ返るエロい匂いが漂ってくる。ジャン・コクトーは性器に触れずに射精することが出来たそうだが、この作品にも圧縮されたエロのイメージがすり込まれている。

 舞台は回想シーンを除いてほとんどお店のみ。この小さな空間がアントワーヌの頭の中(夢)であり、彼はいつまでもそこに住み続ける。
 こんなに奇妙で、エロくて、甘く、切ない映画はそうそうない。
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by ichio1970 | 2007-03-17 17:28 | 1990

バットマン リターンズ

d0105153_220579.jpg ヒーロー物の名を借りたダークファンタジー。
 1作目『バットマン』でそれまでのバットマンのイメージを覆す、暗くジメジメした世界を描いたティム・バートンがやりたいことを思いっきり炸裂させた作品がこれ。本当は1作目でも本作で展開されたストレンジワールドを描きたかったようだが、映画会社に止められ本人はかなりのフラストレーションを感じたらしい。(あの中途半端な世界観は、それはそれで魅力的なのだが)
 そしてその後『シザーハンズ』を成功させたご褒美に、好きなように『バットマン』の続編を撮らせてもらったというのがことの次第。
 舞台となるゴッサムシティはさらに暗いパラレルワールドにヘンゲ。まるで広角レンズで撮ったようなグニャリと湾曲したセットがさらに悪夢に迷いこんだような気分にさせる。
 そしてストーリーも、ペンギン男、街の影の支配者シュレック、キャットウーマン、バットマンというそれぞれトラウマを抱えている登場人物が、各々の思惑で絡み合うという歪み具合。その中で正義のヒーローであるはずのバットマンと敵であるペンギン男の違いが紙一重であることがあぶり出される。
 こんな映画がメジャーの超大作として堂々とつくられるのだから、やはりハリウッド映画はバカにできない。
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by ichio1970 | 2007-03-04 22:09 | 1990

双生児-GEMINI-

d0105153_16261881.jpg 「都市と肉体」をテーマにした作品を撮り続ける塚本が繰り広げるジャポンゴシックホラー。原作は江戸川乱歩の『双生児〜ある死刑囚人が家庭教師にうちあけた話』。
 乱歩の作品を元にしているとはいえ、舞台となる日本家屋のドンヨリ淀んだ空気感とカオス渦巻く貧民窟の世界観は、『鉄男』を撮った塚本ならではのもの。
 明治大正時代を洒落た感覚で描く手法はよくあるが、そこに『ブレードランナー』のような汚れた都市像と丸尾末広のマンガに漂うようなデカダンス、そして塚本のルーツであるパンキッシュなテイストを織り込むことで斬新な空間をつくり上げている。
 また、どこかぎこちないセリフまわしとカメラワークが不気味な雰囲気を盛り上げる。主演のモッくんと りょうの怪演も見モノ。

 正反対の人生を歩んできた双子と、2人に蛇のようにまとわりつく女がむかえる結末が意外にハッピーエンドに思えてしまうところが、傑作の一歩手前という印象。
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by ichio1970 | 2007-02-23 16:26 | 1990