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セブン

d0105153_2242461.jpg 『羊たちの沈黙』と共にサイコ・スリラーというジャンルをつくってしまった問題作。
 カイル・クーパーが手掛ける病的なオープニングを見るだけで、この映画がタダものではないことが伝わってくる。そして、そのインパクトはラストまで少しも衰えない。いやはや、見終わってこんなにグッタリする映画はそうはない。

 舞台はアメリカのとある地方都市。殺人課の新米刑事ミルズは就任してすぐに猟奇殺人事件を担当することになる。相棒は定年間近のベテラン刑事サマセット。彼らをあざ笑うかのように同一犯人による殺人は繰り返され、それがキリストの7つの大罪(大食・貪欲・怠惰・高慢・色欲・羨望・怒り)に基づいて行われていることが明らかになる。しかし犯人ジョン・ドゥは殺人計画を完成させる前になぜか自首してくる。果たして彼の思惑とは?!

 下手をすればC級映画になりそうな話を独特の雰囲気と緊迫感あふれる作品に仕上げたのは、間違いなくデヴィッド・フィンチャーの演出とダリウス・コンジのカメラ。
 脚本のオカルティックな要素とフィンチャーのテーマである‘信仰の闇’がうまく合わさったといえるだろう。
 また、コンジの描く、薄暗く、いつも雨が降っている都市像は『ブレードランナー』 meets 『エンゼル・ハート』といった趣。
『セブン』が公開されてもう10年以上経つが、この作品を超えるサイコ・スリラーは思い当たらない。
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by ichio1970 | 2007-03-29 22:42 | 1990

髪結いの亭主

d0105153_1727459.jpg パトリス・ルコントが描く、オトコの理想郷。
 
 理容師のオッパイで性に目覚めた少年アントワーヌはそのまま中年男になり、髪結いの亭主になるという夢を叶える。しかも彼は一切働かず、店で美人の妻マチルドを見つめるだけ。しかもしかも客の目を盗んでS○Xまでしてしまう。マチルドもそんなグータラ亭主をとことん愛し、幸せな日々を過ごす。しかし、愛するあまり二人の生活は意外な結末をむかえることに。

 「かほり立つ、官能」、このキャッチコピーが『髪結いの亭主』の魅力をすべてを言い表している。ちょっとした視線、店内に響くハサミの音、髪を洗う仕草、そしてアントワーヌの変テコな踊りすべてから、蒸せ返るエロい匂いが漂ってくる。ジャン・コクトーは性器に触れずに射精することが出来たそうだが、この作品にも圧縮されたエロのイメージがすり込まれている。

 舞台は回想シーンを除いてほとんどお店のみ。この小さな空間がアントワーヌの頭の中(夢)であり、彼はいつまでもそこに住み続ける。
 こんなに奇妙で、エロくて、甘く、切ない映画はそうそうない。
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by ichio1970 | 2007-03-17 17:28 | 1990

犬神家の一族

d0105153_1919299.jpg ビザールな世界を語るうえで、やはり『犬神家の一族』は欠かせない。
 この作品には猟奇的殺人事件という設定を借りて、血の恐怖、スモールタウンの恐怖、森の恐怖など、さまざまな恐怖が盛り込まれている。そして、これらをおどろおどろしく描くのではなく、あくまで美しく、要所要所にスケキヨ、V字死体、岸田今日子など、こけおどし的な要素を織り込むことで唯一無二の世界をつくりあげている。
 また、戦後の混乱や親族間のドロドロした争い、屋敷の暗く冷え込んだ空気感と爽やかな那須の風景との対比がこの上ない効果をあげている。
 役者陣も主演の金田一役の石坂浩二から猿蔵役の寺田稔まで登場時間に関わらずそれぞれが素晴らしいインパクトを残している。

 物語としては、真犯人が自殺をするというとことん後味の悪い結果であるにも関わらず、見終わったあと不思議と青春映画を見たような爽やかな気分になるところがこの作品を凄いところ。
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by ichio1970 | 2007-03-09 19:19 | 1970

バットマン リターンズ

d0105153_220579.jpg ヒーロー物の名を借りたダークファンタジー。
 1作目『バットマン』でそれまでのバットマンのイメージを覆す、暗くジメジメした世界を描いたティム・バートンがやりたいことを思いっきり炸裂させた作品がこれ。本当は1作目でも本作で展開されたストレンジワールドを描きたかったようだが、映画会社に止められ本人はかなりのフラストレーションを感じたらしい。(あの中途半端な世界観は、それはそれで魅力的なのだが)
 そしてその後『シザーハンズ』を成功させたご褒美に、好きなように『バットマン』の続編を撮らせてもらったというのがことの次第。
 舞台となるゴッサムシティはさらに暗いパラレルワールドにヘンゲ。まるで広角レンズで撮ったようなグニャリと湾曲したセットがさらに悪夢に迷いこんだような気分にさせる。
 そしてストーリーも、ペンギン男、街の影の支配者シュレック、キャットウーマン、バットマンというそれぞれトラウマを抱えている登場人物が、各々の思惑で絡み合うという歪み具合。その中で正義のヒーローであるはずのバットマンと敵であるペンギン男の違いが紙一重であることがあぶり出される。
 こんな映画がメジャーの超大作として堂々とつくられるのだから、やはりハリウッド映画はバカにできない。
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by ichio1970 | 2007-03-04 22:09 | 1990