猿の惑星

d0105153_12361144.jpg SF映画の最高作でありながら、一時はお正月になると時間つぶしのために放送される便利ムービーに落ちぶれていた過去を持つ。
 日本で本来のポジションを取り戻したのは、コーネリアスこと小山田クンの功績が大きい。
 この作品の最大の見せ場はラストなのだが、DVDのパッケージで堂々とネタばらしをしているので(パッケージの監修したの 浜村純?!)、ここでも少し触れることをお許しいただきたい。

 『猿の惑星』が素晴らしいのは、‘んなアホな!’という世界を観客に突っ込まれながらも最後まで見せてしまうパワーを持っていること。タイトルバックのド級にチープな宇宙空間や村にしか見えない猿の国も全然アリ。これは脚本・演出・役者が良い仕事をしている証拠。
 世の中に嫌気がさして宇宙旅行に出たテイラーだからこそ、ラストの叫びに重みが出てくるというもの。こういう人物描写って、最近のハリウッド映画に欠けている。
 あと、観る者の感情を完全にコントロールしてしまう ジェリー・ゴールドスミスによる音楽がとんでもなく素晴らしい。川口探検隊が使うのもうなずける。

 そういえば、猿の惑星にいる猿って英語を喋ってるんですね。テイラーと同じく、まったく気づきませんでした。
 興味のある方は、この後ダラダラつづくシリーズ作に手を出してみるのもなかなかオツ。
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# by ichio1970 | 2007-12-04 12:38 | 1960

羊たちの沈黙

d0105153_15291222.jpg 90年代以降のサイコサスペンス・ブームの先駆けで、最高作の誉れ高い作品。
 また、「ハンニバル・レクター」という悪のヒーローを生み出した作品でもある。
 確かにクオリティは高いし、面白い内容だけれど、巷でいわれているほど完璧な映画とは思わない。
 いちばんのネックは、ストーリー本筋のゴールとなる殺人鬼 バッファロー・ビルのキャラが薄いこと。人を殺したうえに皮をはぎ、チ○コを後ろにまわして踊っているわりには恐ろしさが伝わってこない。このキャラに魅力がないと、いくらクラリスやレクターのキャラが立っていても、物語を引っぱるチカラが弱くなってしまう。
 それと、レクター先生はズバ抜けた頭脳の持ち主ということになっているが、これもピンとこない。単に情報を出し惜しみしているオッサンに見えちゃう。

 それでも、この作品が素晴らしいことには異議なしであります。
 まず、ジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスの演技がよい。下手したらジェイソンみたいなモンスターになるレクターをイカれた人間として見ることができたのは、アンソニー・ホプキンスの演技力のおかげ。(瞳孔が開いたあの顔は怖すぎ!)
 そして、ジョディ・フォスターの演技がとんでもなく素晴らしい! 特に初めてレクターに会い、彼に過去を分析されるシーンはこの映画のクライマックスといえる。あれはレクターによる精神的レイプでしょ。

 『羊たちの沈黙』は、女性捜査官が主役という それまであまりなかった設定のせいか、ことある毎に女性に対する男の偏見や下心がクローズアップされている。クラリスは何回、視線や言葉で犯されたことか。
ジョディ・フォスターが『告発の行方』に出演した後で、この作品を選んだわけも何となく分かる。
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# by ichio1970 | 2007-11-24 15:32 | 1990

Mr.Boo!アヒルの警備保障

d0105153_18161234.jpg ホイ三兄弟が集まったMr.Booシリーズの4作目(3人が出演したのは、この作品が最後)。
 最初に言っておきますが、Mr.Booシリーズのファンの間では、原語ではなく広川太一郎による吹き替えバージョンで観るのが基本。

 で、『Mr.Boo!アヒルの警備保障』は、作品の完成度・吹き替えとも最高点に達したシリーズ最高作。「ギャンブル大将」の頃の下品さと大衆受けするソフトなテイストをうまくブレンドして、ファンでなくても見やすい内容になっている。笑いも前時代的なドタバタから「オレたちひょうきん族」に通じるスピーディー&オバカテイストへと進化。
 広川太一郎・富山敬・安西正弘による吹き替えも絶妙のコンビネーションを披露。マイケル・ホイ以外の声優は作品によってコロコロ変わっているが(ツービートがやったことも)、やっぱりこの3人がベストメンバーでしょう。
 広川太一郎の駄洒落は、今までの作品ではセリフの合間に挟み込むスパイスだったが、本作ではマシンガンのように連発し、面白い面白くないの問題を超えて、独特のグルーヴを生み出している。
マイケル・ホイはこの調子で傑作を連発していくのかなと期待していたのだが、残念ながら精彩を欠く状態がつづいている。彼もすでに60代。今後は枯れた笑いをつくって、もう一度第一線に戻ってきてほしい。
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# by ichio1970 | 2007-10-29 18:17 | 1980

アメリカン・サイコ

d0105153_16292250.jpg ブレット・イーストン・エリスの同名小説の映画化。原作は、ねらいは分かるものの小説としての面白さにつながっておらず、ガッカリした覚えがある。
 それに比べこの作品は原作のエッセンスを残しつつ、まったく別物の作品としてつくり上げたところがクレバー。映画が原作を超えた珍しいケースといえる。
 
 主人公パトリック・ベイトマンは、若くして高級マンションに住み、ブランド品で身を包む会社役員。しかし、ホントのところは仕事など一切せず、同じような境遇のエグゼクティブと毎日遊びほうけているだけ。しかししかし、ホントのホントの彼の正体は身の毛もよだつ連続殺人者というお話。

 ジャンルとしてはサイコ・サスペンスになるんでしょうが、内容は完全にコメディ。80年代のバブル景気に浮かれていたヤッピーと、この映画がつくられた当時量産されていたサイコ物を茶化している。名刺バトルや、ヒューイ・ルイスのウンチクを披露しながら知り合いを殺すシーンはサイコではなくサイコー。メアリー・ハロンという監督、なかなかやります。
 美術も秀逸。キャラクターや世界観を登場人物に説明させるのではなく、彼らを取り巻く環境に語らせている。
 それと主人公を演じるクリスチャン・ベールが滅法うまい。役柄というよりも、この作品の意図を完璧に理解して演じているのがひしひしと伝わってくる。派手さはないけど、いい役者。
 
 すごく優れた作品ではあるものの、つくられたタイミングが若干ズレていた。もう少し早い時期につくられていたら、もっと評価されていたはず。
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# by ichio1970 | 2007-10-15 16:30 | 2000

ブレードランナー

d0105153_13373111.jpg  とにかくリドリー・スコット&ジミ・シードが生み出した未来の都市空間が素晴らしい。超高層ビルの下にうごめくアジアン・テイストなスラム街。住みたくはないが、一度は行ってみたい。
 それまでの未来像といえばハイテクで洗練された世界というのが大半だったが、この作品では科学は進歩していながら生活環境は後退しているというアンバランスな世界観が提示されている。(汚れた未来像を提示したのは『スター・ウォーズ』が先だが、ここまで徹底されていなかった)
 『ブレードランナー』で描かれた未来都市はその後SF映画のDNAレベルまで浸透してしまい、未だにこれを超える世界観は生み出されていない。『ブレードランナー』『マッドマックス2』『未来世紀ブラジル』が凄すぎたんで
 また、この作品にはハードボイルとクラシカルな恐怖映画の雰囲気が取り入れられていて、独特の空気間を漂わせている。リドリー・スコットは後のディレクターズ・カットでいかにもハードボイルチックなナレーションをカットしたが、個人的にはオリジナルバージョンが好き。(完全版でのユニコーンのシーンも説明っぽくていただけない)
 もうひとつ特筆すべき点は、敵であるレプリカントの死に様。女のレプリカントは主人公に後ろから撃たれてしまうし、大将のバディーがうなだれて死ぬシーンは悲しすぎる。
 文句なしの傑作にも関わらず、主演のハリソン・フォードはこの作品をひどく嫌っているのだとか。
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# by ichio1970 | 2007-09-29 13:38 | 1980

エンゼル・ハート

d0105153_16364338.jpg ウィリアム・ヒューツバーグのオカルト小説『墜ちる天使』を映画化した、アラン・パーカーの異色作。

 浮気調査などを手掛ける冴えない私立探偵ハリー・エンゼルのもとに、ルイ・サイファーと名乗る謎の男から人捜しの依頼が舞い込んでくる。法外な報酬に目がくらみ、気乗りしない仕事を引き受けたエンゼルだったが、イヤな予感は的中、連続殺人事件に巻き込まれ、次第に謎の悪夢に苛まれるようになる…。

 この作品がつくられた80年代中頃は、アラン・パーカーもミッキー・ロークもデ・ニーロもノリまくっていた時期で、オリジナリティーのある世界観を作り上げている。現在のお三方を見ると、ファンとして悲しくなるばかり。
 アッと言わすようなショッキングシーンはないが、螺旋階段やエレベーター、換気扇、シャッターなどをの小道具を使ったイメージ映像が、観る者の恐怖心をジワジワあおる。
 また、舞台となる南部の町の描写も素晴らしく、雨と湿気が人を狂わしていく様がこっちにもジト〜と伝わってくる。
 幽霊やサイコキラーのようなビックリ系もいいが、この作品のような後に引く納豆タイプの恐怖映画ももっとつくってほしい。
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# by ichio1970 | 2007-08-24 16:37 | 1980

未来世紀ブラジル

d0105153_16152049.jpg テリー・ギリアムの代表作というだけでなく、SF映画を代表する傑作。
 特にストーリーと美術はタメ息もので、テリー・ギリアムのあふれんばかりのイマジネーションを楽しめる。
 物語の前半はウィットに富んだセンスを散りばめながら軽快に進んでいくのだが、知らない間に悪夢的迷宮に迷い込んでいるという、怖い映画である。
 コーエン兄弟も『未来は今』で本作の前半部分のテイストとレトロなゴシック美術を借用(?)したが、あらゆる面でこちらの方が上。
 
 また、ジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ、イアン・ホルムといった役者陣も、嫌味な演技になる一歩手前の怪演で、それぞれいい味を出してる。さすが!
 
 この作品以降テリー・ギリアムのテンションは落ちる一方で、『ブラザーズ・グリム』を観たときは‘終わった’と思ったが、『ローズ・イン・タイドランド』で復調。あと1本でいいから『未来世紀ブラジル』クラスの作品をつくってほしい。
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# by ichio1970 | 2007-08-17 16:16 | 1980

アイズ・ワイド・シャット

d0105153_1759221.jpg  トム・クルーズ×ニコール・キッドマン夫妻(当時)が夫婦役で出演し、オールヌードでF○CKシーンまで披露した話題作。そして、スタンリー・キューブリックの遺作。
 巷の評価はイマイチなようだが、かなりの力作。いや傑作といっていい。

 金持ち相手にうまくやっている内科医ビルはある晩、妻から‘見知らぬ水兵さんに本気でF○CKされたいと思った’と告白され動揺する。
 F○CK!とばかりに夜の街を彷徨っているうちに、あれよあれよと大富豪が集う謎の仮面乱交パーティーに侵入することに…。

 この映画が凄いのは、人物描写でも、役者の演技でも、乱交パーティーの描写でもない。これらははっきりいってイマイチ。(でも、乱交パーティーのオープニング儀式は妙に印象に残ります)
 弛緩した時間感覚、これがこの作品を特別なものにしているすべて。設定ではほんの僅かな時間を描いただけなのに、ものすごく長い出来事を見せられているような気がし、さらに途中から映画を観はじめてどれくらい時間が経ったりか分からなくり、こっちまで謎の空間に迷い込んでしまった感覚に襲われる。

 で、最後はニコール・キッドマンの「F○CKしましょ♪」というセリフであっけなく終わる。
 これがキューブリックの意図によるものなのか、それともただ単にお歳でユルくなっていただけなのかは謎のまま。F○CK!
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# by ichio1970 | 2007-08-10 17:59 | 1990

燃えよ ドラゴン

d0105153_21161517.jpg ブルース・リーの名を世界中に知らしめたクンフー映画の傑作。
この作品が日本で公開された時、ブルース・リーはすでに亡き人となっており、彼はいきなり伝説の人となる。
 リーは撮影中すでに病におかされており、カラダの線が細くなっているもののアクションのキレは冴えまくり。しかし、敵役と脇役が見劣りするため、格闘シーンに物足りなさを感じるのも確か。ボスキャラのハンなんて単なるオッチャン。
 ただ、そのことがリーの超人ぶりを際だたせるという、思わぬ効果が出ていたりする。また、ハリウッドのB級監督 ロバート・クローズの頑張りやラロ・シフリンの音楽の効果もあり、迫力あるバトルシーンに仕上げている。
 ストーリーや設定はツッコミどころ満載だが、そんなものは完全無視して、ブルース・リーのアクションと表情を見て泣くのがこの作品の正しい鑑賞法。
DON'T THINK, FEE〜L!!
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# by ichio1970 | 2007-07-27 21:16 | 1970

地獄の黙示録

d0105153_1759556.jpg 完全に壊れた映画。戦争の狂気ではなく、この映画に携わった人たちの狂気がフィルムに刷り込まれたスペクタクル巨編。
 ジョン・ミリアスによる脚本の初稿は、ジャングルで帝国を作り上げたカーツ大佐をウィラード大尉がドンパチの末退治してめでたしめでたしという、戦争バンザイな冒険活劇だった。それに何か意味深なテイストを出してみたいと思ったのがコッポラの悲劇のはじまり。
 相次ぐキャストの変更。決まったキャストはみんなヘベレケ状態。(マーチン・シーンは過酷な環境のせいで心臓発作であわやあっちの世界へ。デニス・ホッパーはドラッグであっちの世界へ逃避行。マーロン・ブランドはみんながアッと驚く肥満ぶりを披露したと思ったら、脚本を無視して意味不明な言葉であっちの世界と交信)
 さらに相次ぐトラブル、決まらないストーリー、予算オーバー、映画会社からのプレッシャーなどにより、コッポラ自身がオーバーヒート。そして、「私が死んだらミリアスが、ミリアスが死んだらルーカスがこの作品を完成させなければならない」という有名なセリフを吐く。その意気込みには拍手をおくりたいが、言われた人は迷惑極まりない。

 この作品の魅力はストーリーでも戦闘シーンでもなく、小型ボートで川を遡りつづけ、次第にグニャグニャと歪みはじめる時間感覚。そして奇妙なエピソードやキャラクターが花を添え、ここがどこで、いつから映画を観ているのか分からなくなる。(作品のつくりもドアーズの「ジ・エンド」からはじまり、タイトル表示で終わるという歪みっぷり)
 これは作品はコッポラのいい加減さと脳天気さが生んだ偶然の傑作。
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# by ichio1970 | 2007-07-06 17:58 | 1970