バットマン リターンズ

d0105153_220579.jpg ヒーロー物の名を借りたダークファンタジー。
 1作目『バットマン』でそれまでのバットマンのイメージを覆す、暗くジメジメした世界を描いたティム・バートンがやりたいことを思いっきり炸裂させた作品がこれ。本当は1作目でも本作で展開されたストレンジワールドを描きたかったようだが、映画会社に止められ本人はかなりのフラストレーションを感じたらしい。(あの中途半端な世界観は、それはそれで魅力的なのだが)
 そしてその後『シザーハンズ』を成功させたご褒美に、好きなように『バットマン』の続編を撮らせてもらったというのがことの次第。
 舞台となるゴッサムシティはさらに暗いパラレルワールドにヘンゲ。まるで広角レンズで撮ったようなグニャリと湾曲したセットがさらに悪夢に迷いこんだような気分にさせる。
 そしてストーリーも、ペンギン男、街の影の支配者シュレック、キャットウーマン、バットマンというそれぞれトラウマを抱えている登場人物が、各々の思惑で絡み合うという歪み具合。その中で正義のヒーローであるはずのバットマンと敵であるペンギン男の違いが紙一重であることがあぶり出される。
 こんな映画がメジャーの超大作として堂々とつくられるのだから、やはりハリウッド映画はバカにできない。
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# by ichio1970 | 2007-03-04 22:09 | 1990

コレクター

d0105153_1910137.jpg モーガン・フリーマン主演の『コレクター』(原題:『キッス・ザ・ガール』)ではなく、ジョン・ファウルズの小説を映画化した方の『コレクター』。
 
 ストーリーは、孤独な銀行員フレディがギャンブルで儲けた大金で郊外の一軒家を買い、恋心を寄せていた女性を誘拐し、監禁するというお話。
 この作品が公開された時分は‘ありそうでない話’という感じだったのだろうが、今では日常茶飯事に起きていることだけに余計に怖い。

 この映画で最も強烈な印象を与えるのは、女性が監禁されている部屋。外界から遮断され、時間の概念もない空間はまさに魔界。しかし、妄想狂が自分の夢を実現させるためにつくり上げた小宇宙でもがく女性の姿は何とも美しい。このイメージはフレディの唯一の趣味である蝶の収集に重ねられ、詩的な美しささえ漂わせている。
 実はこの映画、『ローマの休日』を撮ったウィリアム・ワイラーの作品。甘いロマンスの名作をつくった監督が、一方で裏『ローマの休日』と呼びたくなるダークファンタジーを撮っていたとは、何ともドス黒いものを感じる。
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# by ichio1970 | 2007-02-27 19:10 | 1960

双生児-GEMINI-

d0105153_16261881.jpg 「都市と肉体」をテーマにした作品を撮り続ける塚本が繰り広げるジャポンゴシックホラー。原作は江戸川乱歩の『双生児〜ある死刑囚人が家庭教師にうちあけた話』。
 乱歩の作品を元にしているとはいえ、舞台となる日本家屋のドンヨリ淀んだ空気感とカオス渦巻く貧民窟の世界観は、『鉄男』を撮った塚本ならではのもの。
 明治大正時代を洒落た感覚で描く手法はよくあるが、そこに『ブレードランナー』のような汚れた都市像と丸尾末広のマンガに漂うようなデカダンス、そして塚本のルーツであるパンキッシュなテイストを織り込むことで斬新な空間をつくり上げている。
 また、どこかぎこちないセリフまわしとカメラワークが不気味な雰囲気を盛り上げる。主演のモッくんと りょうの怪演も見モノ。

 正反対の人生を歩んできた双子と、2人に蛇のようにまとわりつく女がむかえる結末が意外にハッピーエンドに思えてしまうところが、傑作の一歩手前という印象。
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# by ichio1970 | 2007-02-23 16:26 | 1990

マッドマックス2

d0105153_157475.jpg 80年代、『ブレードランナー』と並んで近未来のイメージを植えつけた作品。
 『ブレードランナー』はアジアンゴシックと呼びたくなるスラム街、そして『マッドマックス2』はパンクファッションに身を包んだ悪党が徘徊する荒野が舞台。
 この時期の近未来を描いたSF映画は、ほとんどがどちらかの亜流になっていたくらい圧倒的な世界が表現されている。どちらも光り輝く明るい未来ではなく、汚く、秩序の崩壊したカオスが描かれたのは偶然ではなく、当時の社会情勢や人びとの不安感が滲み出てきたもの。
 こんな時代にとことん浮かれてバブルに突入していった日本は、外国から見れば完全にイカれた国だったに違いない。
 
 本作はビジュアル面では他を寄せつけない圧倒的なクオリティを誇っているが、ストーリー・人物描写はかなりいい加減。しかしマッドマックス シリーズは、マックスがV8インターセプターを乗り回し、ショットガンをブッ放してくれればそれでOK。
 と思ったら、インターセプターは早々に破壊され、ショットガンもほとんど不発。実はこの作品、かなり身もだえする寸止め映画である。
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# by ichio1970 | 2007-02-21 15:08 | 1980

ノスフェラトゥ

d0105153_233431100.jpg ヴェルナー・ヘルツォーク & クラウス・キンスキーの変人コンビが唯一無ニのドラキュラ像をつくり上げたゴシックホラー。オリジナルは20年代にF.W.ムルナウによって撮られた『吸血鬼ノスフェラトゥ』。
 本編に行く前にまず、ポポル・ヴーによる不気味な曲をバックにミイラが映し出されるオープニングで異境の世界に連れて行かれる。何の説明もないこの映像だけで、ヨーロッパ深部に眠る呪われた歴史が呼び起こされるのがヒシヒシと伝わってくる。

 ドラキュラ伯爵は家を売りに遠路はるばるやって来たジョナサンの妻ルーシーを見て一目惚れ。彼はジョナサンの血を吸ったあと、ルーシーを求め城を出たため、ヨーロッパ全土にベストが大蔓延。そしてジョナサンは妻を守るために命からがら町に戻るが…。

 ここでのドラキュラは、ハマー映画が作り上げた‘黒マントの紳士ドラキュラ伯爵’とはほど遠い、病的で醜い初老の男。彼が寂れた古城に佇む姿、ペストで荒れ果てた町を彷徨う姿、イザベル・アジャーニ演じるルーシーを息を呑んで見つめる姿、どれもが不気味で哀しく、そして美しい。
 この静かで深みのある退廃美はヨーロッパ人でないと絶対に描けない。
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# by ichio1970 | 2007-02-19 23:35 | 1970

バートン・フィンク

d0105153_1305218.jpg 薄暗く長い廊下、ベロンとめくれる壁紙、映画のラッシュフイルム、燃え上がる安ホテル、すべてが地獄の入口に見えるコーエン兄弟の異色作。

 ニューヨークで注目されている新鋭の舞台作家バートン・フィンクは、ハリウッドからC級レスリング映画の脚本を依頼される。映画会社のオフィス、社長、ロスの蒸し暑さ、すべてに居心地の悪さを感じながらも、エージェントのすすめで仕方なく契約することに。依頼された映画は中身のないZ級の作品なのだが、これがどうしてなかなか書けない。悩めば悩むほどイメージが遠のいていく。そしてだんだんとタイプライターに挟み込まれた白紙や、ホテルの部屋の壁がフィンクを追いつめる。切羽詰まった彼は空想の世界へと逃げ込むようになり、現実と幻想の境目がなくなっていく…。

 この作品を観ていると、どこからどこまでが本当なのか分からなくなる。しかしこれは私たちの住む世界も同じこと。現実だと思っていることもファジーな機能を持つ脳を通しており、すべての出来事は脚色されたフィクションだといえる。
 そういう意味で『バートン・フィンク』は、一見幻想的でありながらリアルに人の頭の中を描いた作品。
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# by ichio1970 | 2007-02-16 13:01 | 1980

Uターン

d0105153_1892753.jpg オリバー・ストーンの最高作というだけでなく、クライムムービーの中でも屈指の傑作。

 借金まみれのろくでなしボビーが愛車ムスタングと共に迷い込んだのは、住民みんなが少しずつ狂っている砂漠の町スペリア。焼けつくような暑さと不条理な出来事の数々、迫り来る借金取りの恐怖で、ボビーだけでなく観てるこっちの頭もショート。イカれた自動車修理工とのやりとりは、本当にこっちまでスパナを振り下ろしたくなる。

 オリバー・ストーンは前作『ナチュラル・ボーン・キラーズ』で酷評を喰らったわざとらしい演出をグッと抑え、ノツコツと乾いたタッチでアメリカ大陸から滲み出す狂気を描きだしている。
 スペリアの住人はきっとどこへも抜け出せないスモールタウンの鬱屈だけでなく、砂漠に棲む地霊にも狂わされているのだろう。
 この作品といい、『悪魔のいけにえ』といい、アメリカ内陸部には別の世界があることを教えてくれる。
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# by ichio1970 | 2007-02-14 18:10 | 1990

ブルーベルベット

d0105153_1382351.jpg デヴィッド・リンチの変態ワールドが公のものとなった記念碑的作品。
 見所はカイル・マクラクランの白いオイドではなく、オープニング。
 青いカーテンの向こうには、懐かしいオールディーズをバックに揺れるチューリップや、にこやかに手を振る消防士など心和む景色が。でも、どこか変。何だろうと覗いてみると、そこにはグチョグチョ、レロレロな世界が大きな口を開けている。
 サバービアライフに潜む「魔」は、リンチのテーマ。ネオンの光によってあらわになる、日常と隣り合わせの闇の何と恐ろしくて美しいこと。
 
 そしてこの作品でもうひとつ重要なのは、デニス・ホッパー演じるフランクがハリウッドの映画人に、‘こんな訳の分からんヤバい輩を登場させてもいいんだ’と教えてしまったこと。
 「俺を見るな!」と殴りながらF◎◎Kする姿は確かにインパクトはあったが、個人的にはディーン・ストックウェルが演じる売春宿のママが「イン・ドリームス」を歌う姿の方がディープインパクト。彼がどんな人間で、どんな生活をしているのか、こっちの方もこっそり覗いてみたい。
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# by ichio1970 | 2007-02-14 13:09 | 1980